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復活キースさん.後編

 
 (前編) http://ariga-to-ne.jugem.jp/?eid=478
 (中編) http://ariga-to-ne.jugem.jp/?eid=479 
 
 食事を終えた僕たちは、バンガローの前にあるテーブルでくつろぎました。。
 そこからが宴の本番なのですが、月明かりの下で秋の虫の声を聞きながら、しみじみお酒を飲んでいるだけでは退屈になってきました。
 そこで、たまたま偶然捕まえた黄金虫を紙コップに入れ、丁半博打のようにコップを開けて、黄金虫が動き出した方向に座っている人が一気飲みをするというゲームを提案したところ、「それは面白い、ぜひやろう、今すぐやろう」ということになりました。
  
 お約束どおり、まずは虫嫌いのチャーリーさんが集中的に餌食になりました。この人は本当に虫に好かれるタイプのようで、席を移動しても黄金虫はチャーリーさんの元へ向かいます。また小さな蛾や羽虫もチャーリさんの周囲に寄ってきて、まるでエア・ドラムを叩くように虫を追い払う姿は、千手観音のようでしたが、お酒が進むにつれてゼンマイが切れたようにスローになり、最後はテーブルに突っ伏してしまいました。

 次いでワイマンさんは、普段よほどストレスが溜まっているのか、アルコールが入るとべらんめぇ口調になり、「オメェの虫嫌いを治してやるよ」と、酔いつぶれているチャーリーさんの服を脱がし、もっと虫が集まるように、グレートカブキの毒霧のように「プーっ」とお酒を吹き付けようとしたところ、口に含んだアルコールだけならまだしも、胃の内容物まで裸のチャーリーさんの背中にぶっかけてしまい、申し訳なさそうに水道まで彼を引き摺っていき、その場で力尽きたようです。
  
 残されたのは僕と敏江です。さすがに落ち着いて静かに飲むことになったのですが、突然敏江が「寒い!」と騒ぎ出しました。顔をみると血の気が失せています。
 「ど、どういうこと?」
 急性アルコール中毒だったら大変だと思いましたが、訊いてみるとそうではなくて、もっとひどいことに、「霊」が寄ってきているというのです。
 
 こういう展開になるのは、本当に勘弁して欲しいのです。
 確かに敏江が指差す方角で木々は揺れるし、落ち葉を踏みしめる音も聞こえたような気もするし、きっと夜風の仕業なんだと思いながらも、徐々に遠くで酔っ払いがウゲ〜って吐いている音さえも魔物の咆哮のように聞こえる嫌な気分になりました。
 彼女の霊感のいい加減さはタロットカードで立証済みで、たいしてアテにならないこともよく知っていましたが、声を殺しながら「ほら」とか「聞こえる?」なんて言われると、面倒くさい気持ちと、不気味な気持ちが相まって、未熟な僕はどうしていいのか分からず、敏江に同調するしかなかったのです。
 
 楽しいはずの合宿が、結局みんなお酒で脱落して、残された僕は敏江にビビらされている。いったい、どうしてこうなってしまったのか。

 「困ったな・・・そうだ!」 
 僕はバンガローに戻り、スヤスヤ眠っているキースさんを大げさに揺り起こしました。
 「大変です、起きてください!」
 
 目覚めたキースさん。
 さっきまでカレーの準備をしていたのに、次の場面は一転して夜。
 チャーリーさん、ワイマンさんはなぜか不在で、敏江が青い顔をしてベンチで凍りついており、高校生が必死の形相で自分を揺り起こす事態が何なのか、理解するのは大変なはずですが、この人にはそもそも「理解」という概念がないのかもしれません。
  
 とりあえずのそのそとバンガローから這い出てきて、タバコを一服。
 「霊が出たそうです、霊です!」って僕が指を差すと、くわえタバコでその繁みまでフラフラと歩いていき、立ち止まりました。
 霊と対峙するデビルマン。
 僕の脳裏にそんなオカルトティックなイメージが湧きましたが、単に起き抜けの尿意を催しただけで、その場を目掛けてシャー。
 
 「危ないです!霊!霊!」って指差しても、「ん?」と放尿から得られる恍惚の解放感を維持したまま、おまけにすごく湿った放屁を、闇夜にとどろかせました。山の魔王の雄叫びのごとき、豪快な一発です。
 「ブゥゥゥ・・・あっ」
 「どうしたんですか?」
 「い、いや、レーやなくてミーが出た・・・」
 という落語のようなオチがついた瞬間、「だから好き!」と敏江が叫びました。そっちの方が怖くて僕は「ひっ!」と声を挙げてしまいました。
 
 怪奇現象をも恐れないキースさん。これは平常心だろうか、ただ愚鈍なだけなのだろうか。ともあれ誰よりも大物にみえたし、葉巻を吸う権利もあるなと思いました。
 
 水道にパンツを洗いにいったボスは、そこで泥だらけの酔っ払い二人の姿を発見し、ニカッと笑ってこう言いました。
 「オマエらって、ロックしてるぜ!」
 
 その夜からバンドの名前は、「ザ・マディ・ウォーター」になりました。 
   
 

| 親友Tさんのこと | comments(2) | ブログトップ |
信じられないような、ホントの話、なんですね?
本当にこんな2人組がおられたのですか!
キース&敏江…すごいです
本にできそうですね
Posted by: Nini |at: 2012/09/26 10:15 PM
Niniさん、ありがとうございます。
多少の誇張はありますが、残念なことに本当の話です。
高校一年生の僕には、色んな意味で刺激的でした。こんなに真剣にデタラメな大人がいたなんて、一生忘れられません。
記事にできないエピソードも多々ありまして、またオブラートにくるんでご紹介させていただきますので、今後ともよろしくお願いいたします。
Posted by: tomi |at: 2012/09/26 10:45 PM









 
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