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オニ


子供の頃、毎日のように口にしていたのに、
大人になって、まったく言わなくなった台詞、
「いま鬼だれ?」。


小学生の3〜4年生といったところか。
運動場は5〜6年生のドッヂボールに占拠されているから、
校庭で鬼ごっこ的な遊戯に耽るしかなかったわけだ。


「いま鬼だれ?」


しがらみに生きる大の大人がこの台詞を発すると、
なかなか気まずいシチュエーションになる。


ジャンケンに負けたわけでもないのに、
別にこちらが頼んでもいないのに、
たいていは「嫁」がその役どころを受け持つ。
まさに鬼に金棒、
嫁にカネボウ化粧品といったところか。


「いま鬼だれ?」
「ワタシ!」
おお、怖い。
あまり嫁関連のことは書かない方がいいようだ。

 

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フェイント


フェイント (feint)とは、
球技や格闘技などで、相手を惑わせるためにする動作。
予測と異なる行為で敵の虚をつき、欺く技である。

しかしこれは、スポーツの世界に限ってのものではなく、
我々がふだん何気なくやり過ごしている日常にも存在する。
そしてその技を巧みに使いこなせる者と、
相手のフェイントをあらかじめ想定できる者が、
対人関係の成功者といえよう。



あれは僕が中学生の頃だった。
その日はちょうと今頃の時季、昼休みが終わって5時間目のこと。
春風がそよそよと教室のカーテンを揺らし、
遠くの空からセスナ機の飛行音に混じって商店街の宣伝が聴こえている。
定年間近の老教師の声も子守唄のように淡々で、実にのどかだ。
 
教師からの問題は座席順に当てられるようになっており、
この調子なら当面の間、自分の番ではないと高を括っていた僕は、
春眠暁をおぼえずの言葉どおり、午後のまどろみに包まれていた。

授業中の居眠りには、机に突っ伏して眠る方法もあるが、
これだと額に変な線が残ったり、
机の上やノートが涎まみれになるおそれもあり、
女子からキモいと嫌われるかもしれない。
ナルシストの僕には許されることではない。
僕は両腕を腹部で組み、
教科書を枕にして、首だけを真横に向けて寝るタイプだった。
このポーズの最大の利点は、居眠りを指摘されたとき、
「腹痛」をアピールでき、
あわよくば保健室のベッドに栄転できる可能性もあることだ。
逆に難点は、無防備な顔をさらすことであるが、
僕の場合、母性本能をくすぐる寝顔なので(自分では見たことないが)、
問題ないだろう。

いつものように真横を向いてウトウトしはじめた。
上まぶたが鉛のように重たいが、さすがに熟睡はしない。
ただこうして眼輪筋の力を抜きながら、
思考を停止していることが気持ちいい。
時々無意識に右の薄目を開けると、
隣席の女子の横顔が見える。
黒板に書かれたものを、懸命にノートに書き写している。
こんなに昼寝に適した環境でも、
ちゃんと授業を受けるなんて、
真面目だなぁ、立派だなぁ、尊敬しちゃうなぁ。



彼女のことは今まで恋愛対象と考えたことはない。
どこに住んでいるのか、交友関係すらあまりよく知らないが
きっと「おとなしい子」たちのグループだ。
隣席のよしみで、シャーペンの芯をもらったり、
教科書の朗読の順番がまわってきたとき、
いま何ページの何行目かを教えてもらう程度の、
ほんの「おとなりさん」の付き合いでしかない。

しかしこうやって夢見心地で彼女の横顔を眺めていると、
ただの「おとなりさん」が徐々に綺麗に見えてきた。
白い肌、サラサラの黒髪、通った鼻筋・・・。
「あれ?今まで気づかなかったけど、
この子ってこんなに可愛かったんや」
不覚、こんなに近くにいる彼女の美貌を、
僕はいままで見過ごしてきたのだ。

心のどこかがきゅんと締めつけられる感じがする。
それはさながら白昼夢に突如現れた天使。
もはや眠りどころではない。
睡魔はすでに吹き飛んで、
僕の全神経は、彼女の存在に奪われてしまった。
ルーベンスの絵の前で横たわった少年も、
僕の「おとなりさん」を見たら、
息を吹き返したかもしれない。

彼女のことをもっと眺めていたいのだが、
いくらデリカシーの無い中坊でも、
パッチリを目を見開いて女性を凝視することは、
マナーに反することくらいは承知している。
だからこのまま寝たふりと間歇薄目を続けよう。
人知れず彼女に見惚れるのだ。
この突然音もなく芽生えた小さな恋心を、
大輪の花にするために。

いずれ終業のチャイムが鳴り自由の身が戻ったら、
さりげなく彼女に何か話しかけようと、
僕はこれまでの中学生活を思い返して、
彼女と共有できそうな話題を必死に探すが、
残念なことに何も思いつかない。

どうでもいい女子とは、
さらにどうでもいい馬鹿話も容易くできるのに。
「ミニおっぱいキャンディーって知ってる?」なんて、
ついさっきの昼休みも、
アホな女子たちと盛り上がれた僕なのに。

「ああオレはこんな可愛い子とは、シャー芯だけのおつきあいか!」

心の中で地団駄を踏んでいると、
突然、僕の前席の奴が椅子を引いて立ち上がった。
座席順が思いのほか早く進んだようだ。



前席のMは、授業中に居眠りすることもなく無遅刻無欠席、
ノートも提出物も真面目にきちんとこなすのに、
なぜかいつも僕より成績の悪い男だ。
今回も国会質疑に応じる税金泥棒よろしく、
「・・・分かりません」
と、消極的な答弁をする。
「次!」
教師は次の回答者を指名する。

瞬時に僕はこれはチャンスだと思った。
彼女にこっそり答えを訊こう。
授業が終わったら、
「さっきはありがとう」と話しかけてみよう。
チャンスをくれてありがとう先生、
そしていつも愚かなM、サンキュー、
もはや君のブレない愚かさは老舗の域だ!

Mが立ち上がった段階で、
どうせ奴の回答が「分かりません」なのは察知していた。
僕はすぐさま小声で彼女に、
「何?何?こたえは何?」と尋ねた。
こういうクレバーな機転をはたらかせることに関して僕は天才だった。

彼女は表情を崩さず、小さな声でたった一言、
「・・・メソポタミア文明」と教えてくれた。

偉いぞハニー、
教師にさとられず答えを教えてくれるなんて、
なんてよくできたオンナなんだ、君は。
押しつけがましくしゃしゃりでてきて、
大声で教えてくるタイプもいるが、
そういう世話焼きは単に
「バカなアンタにワタシが教えてやった」、
という自身の点数かせぎに他ならない。
結果として教えた相手に恥をかかせることになる。

たとえば人前で
「お父さんまた便器の外におしっこ溢したでしょ!」という嫁は、
己の献身と清潔好きを第三者にアピールしているだけだ。

無神経な女の打算的な偽善のせいで、いつも男は恥をかく。
それにひきかえ僕の新しい恋人は、男を立てるタイプだ。
腹話術の名人のように無表情のまま最高のパスをくれる。
結婚したら黙って財布にお金を足しておいてくれる嫁になるだろう。

そんな彼女のナイスなフォローに感謝しながら、
教師の「次!」という声にかぶせ気味で、
僕は堂々と立ち上がり、
得意げに「メソポタミア文明!!」と答えた。
そして声に出してしまってから、
今が「数学」の授業だったことに気づいた。



あっと気づいたときにはもう遅い。
本当は「メソ」くらいで気づいたんだけど、
残りの「ポタミア〜」も止めることはできなかった。
そして僕の口から飛び出した太古の文明は、
もう体内に戻すことはできない。

教室が一瞬、静寂に包まれる。
そしてさっきまで世界一のララバイ奏者だった老教師の、
「何、寝とぼけてんねん!」という怒鳴り声。

僕は彼女の片方の口角が、
異様に引きつるのを見逃さなかった。
天使だと思っていた彼女は、実は悪魔だったのだ。
やりやがったな、このアマ!
おとなしい顔してるくせに、
このオレ様をコケにしやがって!

しばらくの間、僕は同級生から「メソポタミア」とからかわれ、
チグリス・ユーフラテス川の壮大な流れに思いを馳せることとなった。

ジュリーの新曲「ISONOMIA」というタイトルで、
なぜはそんな苦い経験を思い出した。
・・・って、「ミア」しか合うてへんやんけ!

 

 

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<小ネタ>ロケンロールなお年寄りたち

来年からは、という記事のあとに何ですけど、
今日は実際に僕が目撃した小ネタ集。
フェイスブック上ではその都度発表しているのですが、
堺はなかなかロケンロールなお年寄りたちが多いです。


その壱
 
信号待ちで僕と横並びになった見ず知らずのお爺さんが、
スマホに向かって、何か声をあげて検索していました。
「ジェ・ダ・イ!」
なんや、この爺さん。
思わず二度見してしまいました。


その弐

道を歩いていると、
十字路の角で自転車の急ブレーキ。
「!」
「危ないんじゃ、ジジイ!」
とおっさんの怒号。
しかし、その声に間髪入れず返ってきたのが、
「ババアじゃ!」
思わず二度見してしましました。


その参
 
とある病院の談話室で時間をつぶしていると、
自販機の前で老夫婦の会話が聞こえてきた。
「お父さんは何にする?」
「いろいろあるねんな、モカ、キリマンジャロ、カフェラテ・・・」
お爺さんは自販機のメニューを、
わざわざ大きな声で読み上げていきました。
「ワシ、これがええ!キャラメル・・・」
(ほう、おじいちゃん、ハイカラなもん飲むんや)と心の中で僕。
「モスキート!」
思わずホットコーヒー吹いてしまいました。


その四
 
南海高野線に乗っていると、
僕の前に座っていた初老の紳士がケータイを取り出し、
大声で話し始めた。
車内で電話とはマナーが悪いなあと思いながら見ていると、
「・・・もしもし、おかあちゃん?オレやオレ!・・・ん?」
どうやら電話が切れたみたいだ。
初老の紳士は再びリダイヤル。
「もしもし、オレや!・・・えっ?・・・オレ・・・ちゃうって!」
なんかモメているみたい。
ただでさえ大きな老人の声が、さらにボリュームアップした。
「アホンダラ、亭主の声も分からんのか!」
どうやら自宅に「帰るコール」をしたら、
奥さんにオレオレ詐欺と間違えられてたようだ。
昼下がりの車内がすごく和やかになった。

 
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夏のお蔵出し記事

「夏のヒロイン」
(どうしてこんな記事を書いたんだろう・・・)


♪夏が来れば思い出す〜中学時代の夏休みのことを。


中二にもなれば、そろそろ高校受験のことを考えて学力アップ。
少なくとも今まで受けてきた授業の中で、
「ちんぷんかんぷん」なことはないようにと願うのは親心でしょう。
何しろ僕の英語の理解力なんて、黒船来航に脅える浦賀の庶民レベルで、
単語や文法よりも、マイクとケンの人間関係が気になり、
ニューホライズンの教科書に文学的な要素を求めてしまう的外れな子供で、
「こいつら、くだらんこと喋ってんなよ!」とか、実は本気で思ってました。


惨憺たる通知表の結果に驚いた親の命令で、
僕は夏休み限定の塾に通わされることになりました。
せっかくの中二の夏休みですから、
よく寝て、よく遊んで、異性に目覚めて、
着々と不良の階段をステップアップするのが、
本来の正しい夏休みの過ごし方。
勉強なんか、自分が学びたいと思うときに、急速に伸びるもので、
押しつけられてやるもんじゃない。
そう思い続けて40年余、今では学びたいと思っても、
むしろ忘れていく速度がマッハ級です。
やっぱり脳が柔らかいときに勉強しなきゃね、
脳どころか、頭皮まですっかり固くなってしまった今日この頃・・・。一足先に枯れ葉散る季節に突入しています。


友達と同じ地元の塾に通わせたら、
どうせまた問題を起こすだろう。
数か月間の月謝を全額パックマンにつぎ込んで以来、
僕の信用度はすっかり暴落してしまっていて、
今回は電車で数駅の、何の縁もない町の塾に送り込まれてしまいました。
しかも塾といっても、普通の民家で看板も出ていない。
今でいうところの「隠れ家的サロン」ですね。
怪しげなセールスマンみたいに呼び鈴を鳴らして、
家の中に入れてもらうシステム。
いかにも70年代チックな庶民的な応接間に長机を2本ひっつけて、
4〜5人の生徒が正座をして問題集をやらされるんです。


これがけっこうバツが悪い。
僕以外の生徒は、その地元の男女仲良しグループみたいな感じで、
その輪の中に入っていくバイタリティは昔も今も自分にはありません。
おばちゃん先生に紹介されても、小声で「どうも」と挨拶、
連中も「ふーん」っていう感じで、取り付く島がない。


初回は学校の通知表を持参して、
おばちゃん先生に見せなければならなかったのですが、
開口一番の大きなため息が、
ちっぽけな僕のプライドを奈落の底へ叩きつけました。
「ふぅ〜困ったねー」
「テヘ(笑)」
というシュールな場面が、他の生徒に与える影響ときたら。
みんな中二の問題集なのに、英語初心者の僕は中一からです。
恥ずかしいから、無理でもみんなと一緒がいいのに・・・。


そうなると被害妄想というのかな、
連中の小声の会話やクスクス笑い声が、
僕に対する失笑に聞こえてしまって、
もう勉強どころではありません。
シャーペンの芯が折れる、消しゴムを落っことす、
お腹がグルルと鳴る。そもそも僕は身長の割に座高が高い。
それらすべてが「嗚呼ワタシはこんなにブザマな人間です」と
表現してしまっているような情けない気分になり、
中一の英語の問題集を先生に採点してもらっていると、
ペケだらけのそれを覗きこまれているような恥ずかしさ。
帰りたい、早く帰りたいと、頭の中はそればかり。


「ちょっと休憩しましょう」とジュースと洋菓子が出た。
お盆に手を伸ばすのさえ恥ずかしい僕。
すると女子のひとりが「はい」と僕の前に並べてくれながら、
「なーなー、何中?家どこ?」と声をかけてきました。
その頃からですね、僕がそういう女子に弱いの。
うつむき加減でひとつひとつ質問に答えていくごとに、
さっきまでの緊張が一枚ずつめくれていく。


彼女の顔はまだ直視できないけど、
雲間から射す陽が氷を解かすように、
明るくうちとけた雰囲気の彼女にしだいに癒されていく。
他の連中も会話に乗ってきて、和気あいあいとした憩いのひととき。
まんざらでもない彼ら彼女らと、この夏休みの間、
うまくやっていけそうな気分になってきました。
心の中で「女神や、この子は女神サマや」と彼女に感謝感激、好感度が急速アップ。
しおれていた花が光射すところに向くように、
ごく自然に、♪ラララと満面の笑みで彼女の顔を見上げると、
「ワレ!鼻毛でとるやないけ!」


あの気まずさ、一瞬で再び暗雲立ち込める心情。
ティーンエイジャーの淡い恋心を瞬時に断ち切る強烈な破壊力。
鼻毛、恐るべし。
「ちょっとキミ、鼻毛出てるよ」
「えっ、嘘?イヤだ、アタシったら」
「アハハ」
「ウフフ」
という会話が成立しないことは、ウブな僕でも分かっていました。


ただ、目が離せないんですよね。
魔力を秘めた目印みたいに、彼女の鼻毛は僕の視点を独占する。
まるで冒険の地図の矢印が「ココ」と指し示すように、
あるいはターゲットスコープにロックオンされた獲物のように、
彼女が笑うたびにゆさゆさと揺れる鼻毛は、
僕の視界を奪い続けるのです。
デリカシーがないわけではないんだ。
見てはいけない気まずさを凌駕する動物的な条件反射で、
そよぐ鼻毛に見惚れてしまっている僕。


「あ、河合奈保子好きなん?」
僕の下敷きに挟んだ雑誌の切り抜きを発見して、彼女は言う。
「アタシ、河合奈保子に似てるって言われたことあるねん」
頼むからもう何も言うなよ。
目をそらし気味に「うん、まあ」と答えるしかない。
ついには、鼻毛を揺らしながら、
全然似ていないモノマネをはじめやがった。
先生!休憩もう終わりましょう!


その夜、僕は河合奈保子の切り抜きに鼻毛を書いてみた。
うーん、信じられないほど間抜けだ。
いくら可愛いいアイドルでも、鼻毛を書き加えたら、
「コミカルさん」になってしまう。
僕は熱病に浮かされたように、
小6から集めていたあらゆるコレクションに、
鼻毛を書いてしまいました。
笑顔の奈保子、アンニュイな奈保子、歌う奈保子・・・。
しかし、お気に入りの切り抜きも、
とっておきのポスターも結果は同じ、
ああ、何ということになってしまったんだ。
鼻毛写真に囲まれて、僕は途方に暮れるしかありませんでした。


だけど、このお話で一番とばっちりを受けたのは、
夏のヒロイン、河合奈保子さんだ。


この鼻毛の一件で僕は、
人って案外、相手を見ていないことを知った。
イジイジ、コンプレックスを抱くのはやめよう。
明日から座高が高かろうが、お腹が鳴ろうが、英語が苦手だろうが、
きっと連中は気にしていない。
きっとあの子だって、自分の鼻毛に気づいて、
明日は抜いてきてくれるだろう。


翌日、彼女の鼻毛は反対側の鼻に移動していた。

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うっかり八兵衛
 
マイブームといえば、
なぜか最近「うっかり八兵衛」というコトバにハマっている。
高橋元太郎さん演じる、水戸黄門のひょうきん者だ。
八兵衛のうっかりぶりが気になって、
ケーブルテレビの再放送を見たりもする。
たいていは団子を食べすぎて腹が痛くなるケース。
皆さんも、両手に団子の串をもったハチの姿を、
脳裏に思い浮かべることは容易だろう。
  
f04d3ff5.jpg
 
ちょっとどんくさいミスをして、
なにげに「すまん、うっかり八兵衛よりうっかりしてた!」と
ポロっと口をついて出た反省のコトバなんだけど、
それが妙に自分自身のツボにハマってしまい、
「うっかり八兵衛コント」を想像しては、
ひとりニヤけてしまう僕。
  
  
八兵衛ほどのキャラならば、「オチ」はいらない。
「オチ」は瞬時に客が想像してくれる。
これって、すでに誰かプロがネタにしているのだろうか。
  
   
ショートコント「迷子」
  
   うわー、道に迷ってもうた〜!急がなアカンのにどうしよう〜
   ここ右に行くんか、左に曲がるんか、どっちやろ?
   あ、そうや、あそこの人に訊いてみよう!・・・ちょっとすいません!
 

hachi.jpg
   
 ※おそらく正反対の方向に誘導され、目的地にたどり着けないだろう。
  
  

ショートコント「ハードボイルド」

   シーっ!
   いいか八兵衛、今、追っ手に気づかれてはいけない。
   ここは物音を立てずにやりすごそう。
 
 
shogun2g-074-2.jpg

 ※おそらく八兵衛はくしゃみをするだろう。
   
   
そして、ここまででウケてくれた人に対しては、
もはや説明も画像も不要。
タイトルを言っただけで笑えるはず。
  
 
ショートコント「キノコ狩り」
 

  
ショートコント「月面着陸」
 

  
ショートコント「ふぐ調理」
 
  

ショートコント「人命救助」
 

 
 
2012082700351327a.jpg
  
  
ああ、八兵衛よ、元太郎さんよ、あなたは素晴らしい!
人の想像力も素晴らしい。
僕はちょっと集団の中の「八兵衛っぽいキャラ」に憧れる。
 
 
世の中、マスコミに洗脳されて、
「倍返し」だの「百倍返し」だのと、敵意に魅力を感じているが、
八兵衛は「恩返し」の人だ。(と、思う)
  
  
「水戸黄門」をリメイク、実写化すれば、
助さん役と弥七は人気イケメン俳優が演じるだろう。
しかし八兵衛役が一番ハードルが高いんだろうな。
庶民的で、おっちょこちょいで、みんなから愛される食いしん坊。
 
 
もうひとつ、「高橋元太郎侮りがたし」といえるのは、
マッハGoGoGoの主題歌だ。
テレビ放送されていたのとは別に、レコード用に録られたバージョンがある。
高橋元太郎、すごいシンガーだ。
演奏もカッコいいし、ぜひ聴いてみてください。
このカッコよさがわかる人と、友達になりたい。
 

 
 
 
  
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復活キースさん.前編

 
このブログに訪れて下さるご奇特な皆さまには、いつも深く感謝している。
僕のコンプレックスである文章の拙さのため、「長文を読むのは疲れるだろうに」と、心から同情しているのに、若干名、ある記事の続編を希望される方がいて、fecebookやツイッター、メールなどを通じて催促される。
そうなると調子乗りの僕もまんざらではない気分になって、「オレは褒められて伸びるタイプ」だとまた信じ込んでしまう。
 
リクエストは、僕が高校1年生のとき楽器店の掲示板でメンバーを募集した、ザ・ローリング・ストーンズのコピーバンドの話である。
http://ariga-to-ne.jugem.jp/?eid=439

◇◇◇ 
 
 夏休みも終わりに差しかかった頃、バンドメンバーの親睦を兼ねて「合宿」の話が持ち上がりました。発起人は真面目なサラリーマンのワイマンさんです。
 正直にいって、僕はあまり乗り気ではありませんでした。高校1年生の僕が、20歳代後半の社会人たちと寝起きを共にするなんて、刺激的を通り越して無謀な気がしたのです。
 チャーリーさんも面倒臭そうでした。バンドで唯一ナウい人でしたから、「合宿」という体育会系のコトバに抵抗を感じたようです。しかしただ一人、発起人であるワイマンさんの提案に熱烈な賛成で、ノリノリで盛り上がる人物がいました。
 部外者の敏江です。
 
 僕はキースさんの恋人である敏江が苦手でした。
 いつも蛍光オレンジのスエットの上下に、くたびれたサンダル履きで、スタジオに新聞紙にくるんだゆで卵を差し入れる他人の妻、敏江。
 ところが「不倫」という隠微な二文字をみて、10代の少年が抱く、大人の女性に対する性的な憧れなんて、敏江には微塵も感じなかったし、むしろ彼女の毛玉のついたトレーナーや、野ざらしの木製ベンチ並みに朽ちて剥げかかった赤いマニキュアを見るたび、モルタルのチープな生活感が漂ってきて、機会があればゴルゴ13に仕事を依頼したいと思うほどでした。 
 そんな敏江をなぜキースさんが愛するのか、他のメンバーにとっても最大の謎でしたが、滑舌の悪いキースさんの通訳として大いに役立っていることは事実なので、みんなガマンしていました。
  
 誘いもしないのに、人妻の敏江が万障繰り合わせて参加するということで、合宿の話は、これまた微妙なテンションになりました。発案者のワイマンさんでさえ、突然熱が冷めた感じで、適当な相槌でお茶を濁すような、歯切れの悪い物言いに変化していくのを、ティーンエイジャーの僕は見逃しませんでした。
 
 そうなると、もはやバンドの合宿ではなく、単なる慰安旅行の様相を呈してきて、口々に「温泉がいい」だの「カリブ海沿岸に永住したい」だの、好き勝手な話になってきたので、ここはひとつ真ん中をとって(?)、近場にある「関西サイクルスポーツセンターのキャンプ場」、つまりバンガローに泊まることになりました。
 虫嫌いのチャーリーさんが最後までヒステリックに反対していましたが、柄にもなくキースさんがボソっと、「バンガローで頑張ろう…」なんて、一同の腰が砕けるようなお茶目な駄洒落を言い出し、そのどさくさで、「夏の終わりのキャンプ場」に決定しました。
 
 それにしても、行きたくなかったなぁ、僕も。
 
 <つづく>

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復活キースさん.中編

  
 (前編) http://ariga-to-ne.jugem.jp/?eid=478

 場所は夕暮れの関西サイクルスポーツセンターのキャンプ場。
 ツクツクボウシの鳴き声が辺りに虚しく響き、兵どもが夢のあとのような、物悲しさが漂う平日。
 
 その日の夕食はカレー、もちろん仕切りは敏江です。
 他のメンバーが汗と煙にまみれてお米を炊いたり、僕は寝具を取りに本部とバンガローの間を往復したり、それぞれ準備のために労働を強いられていたのですが、ただひとりだけ何もせずにビールを飲みながらタバコを吹かしている不心得な人がいます。
 
 キースさんはまったく何もしない。
 僕としてはマイペースなキースさんに、火の傍をうろちょろされるほうが迷惑だと思っていたのですが、同世代のチャーリーさんとワイマンさんは立腹気味で、
 「ちょっと、アンタの彼氏、何もせぇへんやん!」と敏江に抗議をしました。
 
 「堪忍したってね、この人、ギターしかできないから」なんて、敏江にしては粋な返事をしましたが、
 キースさんはそんなメンバーに向かって、
 「おう、みんな働けよ」って、火に油を注ぐようなことを言いました。
 
 「・・・ちょっと、それタバコやなくて葉巻やん!」
 チャーリーさんが発見した、キースさんの葉巻。
 僕はマンガ以外で、それを吸う人を見たことがなかったのですが、汗だくで働いているときに、涼しい顔で葉巻の灰をぽんぽんと落とされると、とても不愉快なものですね。
 
 そういえば僕は小学校の大掃除の時、マジメに雑巾がけをしている女子の後ろで、縄跳びを床に打ちつけながら、
 「働け、働け、貧乏人はもっと働け」とふざけていて、担任の先生にこっぴどく叱られたことがありますが、キースさんはまるであの日の僕。担任がみたらきっと往復ビンタです。両方の鼻から出血するはずです。
 さすがにチャーリーさんもワイマンさんも社会人なだけあって、「なんやコイツ」みたいな顔だけで事なきを得ましたが、本来お酒の弱いキースさん、カレーが出来上がる頃にはすっかり酔いつぶれてダウンしてしまいました。
 
 <つづく>
 

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復活キースさん.後編

 
 (前編) http://ariga-to-ne.jugem.jp/?eid=478
 (中編) http://ariga-to-ne.jugem.jp/?eid=479 
 
 食事を終えた僕たちは、バンガローの前にあるテーブルでくつろぎました。。
 そこからが宴の本番なのですが、月明かりの下で秋の虫の声を聞きながら、しみじみお酒を飲んでいるだけでは退屈になってきました。
 そこで、たまたま偶然捕まえた黄金虫を紙コップに入れ、丁半博打のようにコップを開けて、黄金虫が動き出した方向に座っている人が一気飲みをするというゲームを提案したところ、「それは面白い、ぜひやろう、今すぐやろう」ということになりました。
  
 お約束どおり、まずは虫嫌いのチャーリーさんが集中的に餌食になりました。この人は本当に虫に好かれるタイプのようで、席を移動しても黄金虫はチャーリーさんの元へ向かいます。また小さな蛾や羽虫もチャーリさんの周囲に寄ってきて、まるでエア・ドラムを叩くように虫を追い払う姿は、千手観音のようでしたが、お酒が進むにつれてゼンマイが切れたようにスローになり、最後はテーブルに突っ伏してしまいました。

 次いでワイマンさんは、普段よほどストレスが溜まっているのか、アルコールが入るとべらんめぇ口調になり、「オメェの虫嫌いを治してやるよ」と、酔いつぶれているチャーリーさんの服を脱がし、もっと虫が集まるように、グレートカブキの毒霧のように「プーっ」とお酒を吹き付けようとしたところ、口に含んだアルコールだけならまだしも、胃の内容物まで裸のチャーリーさんの背中にぶっかけてしまい、申し訳なさそうに水道まで彼を引き摺っていき、その場で力尽きたようです。
  
 残されたのは僕と敏江です。さすがに落ち着いて静かに飲むことになったのですが、突然敏江が「寒い!」と騒ぎ出しました。顔をみると血の気が失せています。
 「ど、どういうこと?」
 急性アルコール中毒だったら大変だと思いましたが、訊いてみるとそうではなくて、もっとひどいことに、「霊」が寄ってきているというのです。
 
 こういう展開になるのは、本当に勘弁して欲しいのです。
 確かに敏江が指差す方角で木々は揺れるし、落ち葉を踏みしめる音も聞こえたような気もするし、きっと夜風の仕業なんだと思いながらも、徐々に遠くで酔っ払いがウゲ〜って吐いている音さえも魔物の咆哮のように聞こえる嫌な気分になりました。
 彼女の霊感のいい加減さはタロットカードで立証済みで、たいしてアテにならないこともよく知っていましたが、声を殺しながら「ほら」とか「聞こえる?」なんて言われると、面倒くさい気持ちと、不気味な気持ちが相まって、未熟な僕はどうしていいのか分からず、敏江に同調するしかなかったのです。
 
 楽しいはずの合宿が、結局みんなお酒で脱落して、残された僕は敏江にビビらされている。いったい、どうしてこうなってしまったのか。

 「困ったな・・・そうだ!」 
 僕はバンガローに戻り、スヤスヤ眠っているキースさんを大げさに揺り起こしました。
 「大変です、起きてください!」
 
 目覚めたキースさん。
 さっきまでカレーの準備をしていたのに、次の場面は一転して夜。
 チャーリーさん、ワイマンさんはなぜか不在で、敏江が青い顔をしてベンチで凍りついており、高校生が必死の形相で自分を揺り起こす事態が何なのか、理解するのは大変なはずですが、この人にはそもそも「理解」という概念がないのかもしれません。
  
 とりあえずのそのそとバンガローから這い出てきて、タバコを一服。
 「霊が出たそうです、霊です!」って僕が指を差すと、くわえタバコでその繁みまでフラフラと歩いていき、立ち止まりました。
 霊と対峙するデビルマン。
 僕の脳裏にそんなオカルトティックなイメージが湧きましたが、単に起き抜けの尿意を催しただけで、その場を目掛けてシャー。
 
 「危ないです!霊!霊!」って指差しても、「ん?」と放尿から得られる恍惚の解放感を維持したまま、おまけにすごく湿った放屁を、闇夜にとどろかせました。山の魔王の雄叫びのごとき、豪快な一発です。
 「ブゥゥゥ・・・あっ」
 「どうしたんですか?」
 「い、いや、レーやなくてミーが出た・・・」
 という落語のようなオチがついた瞬間、「だから好き!」と敏江が叫びました。そっちの方が怖くて僕は「ひっ!」と声を挙げてしまいました。
 
 怪奇現象をも恐れないキースさん。これは平常心だろうか、ただ愚鈍なだけなのだろうか。ともあれ誰よりも大物にみえたし、葉巻を吸う権利もあるなと思いました。
 
 水道にパンツを洗いにいったボスは、そこで泥だらけの酔っ払い二人の姿を発見し、ニカッと笑ってこう言いました。
 「オマエらって、ロックしてるぜ!」
 
 その夜からバンドの名前は、「ザ・マディ・ウォーター」になりました。 
   
 

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You're Trouble


 夏が過ぎ、秋になる。
 この時季になると思いだすのは、やはり文化祭だ。
 文化祭では視聴覚室がライブハウスになるのだが、我が校の文化祭は部外者立ち入り禁止で、国立病院の真裏の高校ということもあり、音量と時間の制限もあった。つまり、著しく盛り上がりに欠けるものだった。
 「軽音楽」ではなく「重音楽」をやりたい僕たちは、バンドをやるにあたって、まずは諸々の制限を緩和して、さらに一般入場を可能にして欲しいという願望があったのだが、誰と交渉すればよいのかも分からなかった。
  
 2年生の春に生徒会長に立候補することになった。 
 本当のところ、立候補そのものは、例によって気まぐれだ。
 そもそも僕は小学生の頃から、「生徒会の立会演説会」というイベントがすごく面倒臭くてキライだった。体育館で三角座りをさせられて、できのいい生徒たちの演説を聞くなんて最低だと思っていた。まあ僕も1回くらい舞台の上から、三角座りの全校生徒を見下ろしてやってもいいかなという程度の、安直な思いつきの立候補。ハナから当選するとも思っていなかったし、演説会本番、僕は演台から「テヘっ、やっぱり辞めときます」と、立候補を辞退してやろうかとも考えていた。生徒会史上、前人未到のボケだ。気分は吉本新喜劇で木村進が演じていた「お邪魔ババア」だった。
 
 「お邪魔ババア」とは、「さんまの駐在さん」という劇の中で、犯人が捕まったところに、唐突にもんぺ姿の老婆に扮した木村進が登場して、「待ってください、この子はそんなに悪い子じゃないんです」と迫真の泣きの演技。郷愁を誘うBGMをバックに子供の生い立ちを語り、最後に「どうか、どうか許してやってください〜」とその場に泣き崩れる老婆。駐在役の明石家さんまが肩を抱いて「おばあちゃんはお母さんですか」と尋ねると、「・・・アカの他人です」。途端に身軽でふざけたババアに豹変するという笑い。
 
 そんな感じで、演説中に「生徒会長になる気はない」ってオチをつけたら面白いかもしれない。直前まで僕はそう考えていた。
 ところがマジメそうなライバル候補者や先生たちが、「何でオマエが!」というイラついた攻撃的な目を僕に向け、三角座りの全校生徒が、場違いな僕の登場で少し沸いた。口笛を鳴らす者までいる。
 僕は「カチン」と「エヘっ」が同時に起きる不思議な感覚を覚えた。こうなれば持ち前のサービス精神で「もっと怒らせてやろう&もっと喜ばせてやろう」と思った。
   
 「この場面では何がウケるか」を考えたとき、ふと中学校の体育祭の閉会式を思い出した。ある年の閉会式で校長先生が、
 「皆さんお疲れ様でした、以上!」
 という超ショートな挨拶をして、全校生徒から血の通った支持を得たことがあった。
 僕も「演説しか能のない大人でも、やればできるものだな」と感心した。いつの日かその潔さを自分もどこかで発揮したいと思っていた。そして今がその時だ。
   
 他の候補者が、有権者である生徒たちに向けてではなく、教師のゴキゲン取りみたいなくだらない、長いだけが取り柄の退屈な演説をしている。案の定、客席は冷め切っている。
 いよいよ僕の番が来た。
 みんなよほど退屈していたのだろう、この道化者が何を喋るのか、全校生徒に一瞬の関心と静寂が訪れる。
 僕は大きく息を吸って、
 「・・・みなさん、明るい学校にしましょう、以上!」
 と、ペコっと頭を下げて演台を離れた。
  
 こういう退屈な場面での「たった一言」の破壊力を、他の候補者は知らない。ドッと客席を沸かして満足した僕は、もれなく圧倒的な支持率で当選した。ちょっとしたカリスマだ。まあ、これでどういったレベルの高校だか想像がつくと思う。彼らはまるでマスコミに踊らされて無能を政界に送り込むという失敗を延々と続けている、どこかの国民と一緒だ。反省なんかするもんか。
   
 前代未聞の「勘違い生徒会長」の誕生。何しろ、僕もみんなも勘違いしているのだから。
 ただし、大人たちに言われる「積極的に」とか「自主性」という、大義名分を真に受ける才能は、やはり僕のような「アホ」のほうが勝っている。それに関してだけは僕は適任だったといえる。私利私欲には走ったが、まずは文化祭を「積極的に」一般解放し、さまざまな制限の緩和を行った。
 またそれに伴う風紀上の問題に対しては「柔道部・剣道部・その他運動系クラブ有志」による大人数自警団を設立し、団長に親友Tを任命した。血の気の多いメンバーの中、「負けるが勝ち」が口癖の彼をトップにしておけば諍いは起こらない。
    
 おかげで2年生の文化祭は心置きなくバンドができた。PAの予算も前年よりも多めに確保したし、やはり一般の観客動員が刺激的だった。
 その年は「ランスロット」というハードロックバンドでボーカルを担当し、ラットやナイトレンジャー、オジー・オズボーンの曲を演奏した。歌詞は完全にデタラメ英語だったけど、英語の先生から「発音がいい」と褒められた。
   
 生徒会長は2期やった。
 最後に副会長を1期やって後進を育てた。
 「風紀の乱れ」を正すのが生徒会の役目なのだが、やがて、
 「生徒会長タバコで停学」
 というセンセーショナルな不祥事を起こした僕。
 しかし有権者たちは「ああ、やっぱり」と驚きもしなかった。むしろ笑って許してくれた。あの頃の僕には、悪徳政治家の才能があったのかもしれない。 
 
 BGM;You're Trouble/RATT
 
 
 
 

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Kicks
 柔道部にR先輩という怖い人がいた。
 柔道はもちろんのこと、テコンドーの使い手でケンカでも負け知らず。我が校で「番」を張っていた。何しろ暴走族を一人で追いかけまわし、壊滅させたという伝説の持ち主で、その名は大阪中に知れ渡っていた。

 部員が廊下で先輩とすれ違うときは、大きな声で「ちわっス!」と挨拶をするのが我が柔道部のしきたり。他の先輩とすれ違うときには、ニヤニヤ笑おうが声が小さかろうが別に平気だったのだが、R先輩とすれ違うときは緊張の糸が張りつめた。いい加減な挨拶だとボディブローが飛んできて、ゲホゲホと廊下でうずくまることになるので、これでもかというくらい満点の挨拶をするのだが、それでも油断はできない。
 ちゃんと完璧な挨拶をしたとき、鬼のR先輩はちょっと恥ずかしそうに「おうっ」と頷く。
 頷いてくれるだけでいいんだけど、照れ隠しのためか、すれ違いざまやほっとした瞬間、天井に届くのではないかというほどの、鋭角な蹴りが飛んできて、後頭部やこめかみに突き刺さる。
 これはR先輩なりの後輩に対する愛情表現なのだが、やられる側はたまったものではない。
 しかしこの猛獣とのスキンシップのおかげで、生意気な僕が他の上級生に狙われることはなかった。なにしろ「Rさんの後輩」なのだから。
 
 R先輩とそのお友だち連中は、外見はすでに若者ではなかった。
 「や」のつく職業、しかも幹部クラスといったところで、彼らが校内を歩くことで全校生徒に規律と緊張を与えていた。
 R先輩はほとんど柔道部に練習に来ない。入学当時は熱心に稽古に励んでいたそうだが、あまりに強すぎて他の部員がついてこれなくなったという。2年生になってからは数週間に1度顔を出して、いつも僕たち1年生に地獄のシゴキを与えている他の先輩たちをぶん投げてくれる。そういう意味ではR先輩は僕たち1年坊主の救世主だった。
  
 ある日のこと、久しぶりにR先輩が道場に顔を出した。
 稽古はすでに始まっているので、R先輩は道場の隅でひとり準備体操をはじめた。
 回り稽古で、出席部員が奇数の時は、ひとり余ることがある。
 僕に「余り」の番が来て見学していると、R先輩が、
 「1年、オマエそろそろ受け身、覚えた?」(当時は名前も呼んでもらえなかった。
 
 三年生をゴムボールのように投げ飛ばしまくるR先輩が、まだ受け身すら不安な1年坊主の僕と乱取り?それは乳幼児に「残波」をロックで飲ませるようなものだ。当時の僕は体重が55圈▲蹈に筋肉も発達していなくて、1年部員の中で一番チャラい。おまけについこの間、離乳したばかりだ。
 しかしR先輩の命令には逆らえず、有無をいわさず乱取り開始。僕も骨の2〜3本は覚悟したのだが・・・。
  
 ところがR先輩も、不甲斐ない僕の柔道に「トホホ」ときたのだろう。
 「何でもいいから技をかけてみろ」と、僕の技を受けてくれるという。
 「あっ、それじゃぁ・・・」と覚えたての「背負い投げ」を出してみることにした。
 「えっと、こうやって、それでこう・・・」
 本当にこんな感じ。未熟を通り越して、今、自分で思い出して書いていて情けなくなる。
 R先輩も「もっと引手に力を入れて!」とか、いろいろとレクチャーしてくれるのだが、とにかく怖い。
 
 先輩のカラダを背中に担ぐ。
 「よし、もっと気合い入れて!」
 「はい!」
 「声、出せ、声!」
 力を込めて投げるとき、声を出せばパワーアップするものだ。
 僕も奥歯を噛みしめながら、「よっ!」とか「とっ!」とか声を出す。
 「もっと気合い入れて!」
 恐れ多いことに、R先輩が僕の拙い技で、投げられてくださる。
  
 礼節に厳しいR先輩。しかしその強さは大阪中に知れ渡り、その辺のヤンキーなんか情けなく逃げ出すという。
 「声出せ!」
 「よっ、とっ、ぐぅう!」
 「もっと!」
 「くっ、くっ、このぉ〜ボケェェ〜!」
 一瞬、道場の空気が凍りついたように、周りの部員の動きも固まった。
 やっちゃったよ、吉本くん。泣く子も黙るR先輩を「このボケ!」って言いながら投げちゃった。投げられてくれたR先輩も目も点になっている。
  
 「ちょっとそこに座れ」ということになりました。
 「教えてくれている相手にボケはないやろ!」みたいな叱られ方。
 さすがにシバかれはしなかったけど、生きた心地がしなかった。
 「それとなあ、1年!オマエちゃんと足の爪、切っとけよ!」
 と、爪が伸びていることまで注意されてしまった。
 
 その間にも回り稽古は進んでいるので、僕とR先輩は窓際に座って、他の部員の稽古をしばらく見学することになった。
 僕は急いで救急箱から爪切りを取り出し、足の爪をパチン!っと切ったのはいいけれど、運命のいたずらか、切った爪が跳ねて、スローモーションでR先輩の頬に当たった。
 再び「ちょっとそこに座れ」ということになり、「いまどきの1年坊主は爪の切り方も知らないのか」と厳しく叱られることになった。わずか数分の間に2回もR先輩に叱られた僕。他の1年坊主からは「絶対殺されると思ってた」といわれた。
   
 柔道でR先輩に勝てるようになるまでに1年間かかった。
 その日はきっと、たまたまコンディションが悪かったのだと思うが、「強くなったな」と褒められたときはすごく嬉しかった。ただし翌日から廊下ですれ違ったときの蹴りは、さらに強烈になったけど。
 
 世界征服とか史上最強がこの人のゴールだと思っていたのに、R先輩はやがて大学進学を目指すようになった。僕が知る限りでは、残念ながら一浪することになったのだけど、卒業後は「〇〇予備校で番を張っている」というウワサを聞いた。
 卒業してからR先輩とは一度も会えないんだけど、中年になって生意気になった僕に、また「そこに座れ」と説教して欲しい気がする。
 
 BGM;Kicks /Paul Revere & The Raiders
 
 
 
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